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母が車を手放した日 [想うこと]


母が車を手放したらしい。
あれほど、どこへ行くのにも車で行ってた母が。


まだ岡山でも車がまだ珍しかった頃、
わりとお嬢さんだった母は大学生かそこを卒業する頃から乗っていたらしい。
車種は忘れたが、いわゆるスバル360世代だ。



母は運転がうまかった。父よりもスピード狂だし、警察にも何度も捕まったことがある。
大半がスピード違反だ。もちろんそれは良くないことだが、
小学生の僕にとってそんな母がカッコよかった。


車酔いする僕はいつも母の助手席だった。


岡山に初めて出来たドライブスルーに寄って
大好きなフィレオフィッシュを食べながらハンドルを握っていた母。
そしてその横で母にシェイクを渡したり、ポテトを渡したりしてた僕。


気がつけばそんな母ももう70を過ぎてた。



うちには車はもう1台あるからいいという。弟の車を入れれば2台ある。
しかしバスやタクシーが止めどなく走っている都会とはわけが違う。
バスはほぼ廃線状態。タクシーもまず呼ばなければ走っていない。

近所のおじいさんは90歳近くても車に乗ってる。それが田舎ってもんだ。


田舎の年寄りが車を手放すってことは言い方は悪いが寝たきりになるようなもんだ。
もちろんそれは言いすぎだが、それほどのライフラインを車は担っている。
当然行動範囲は狭くなるし、外へ出ることも億劫になる。


母が車を手放した日。僕は父の背中が丸くなったのに似た感覚を覚えた。

いつまでも元気じゃないんだって。そういう歳になってきたんだってことを。。。




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